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《ご相談内容》Q.「現在医療法人A（東京都港区）の理事長をしている。昔お世話になった別の医療法人B（神奈川県藤沢市）の理事長が、高齢になり、跡取りもいないので、医療法人Bの理事長を引き継いでくれないか、と言っている。医療法人Aの理事長をしたまま、医療法人Bの理事長になることができるか。」

A.医療法人の理事長を兼務することは避けた方が良い。

i.まず、[　医療法第４５条]医療法では医療法人の役員になれない者の規定（欠格事由）がありますが、他の法人の役員の兼務を禁止する規定はありません。法律のうえでは医療法人の理事長を兼務することは可能です。

ii.つぎに、広域の医療法人を監督する所轄は厚生労働省（ひとつの地域の医療法人を所轄するのは都道府県）ですが、厚生労働省の[　厚生労働省HP]医療法人運営管理指導要綱（事務処理上の指針・基準といったもので、法律ではありませんので強制力はありません。）には、他の関係する特定の営利法人の役員との兼務は適当ではないとあります。

ただし、医療法人は非営利の法人ですので、ここでの役員兼務には当たらないと思われます。また、医療法人の理事長兼務については具体的な記述は見当たりません。よって、厚生労働省の行政指導上でも理事長兼務に問題はないようです。

iii.最後に、厚生労働省が作成した[（http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/igyou/）

　同上

医療法人理事長の兼務について

A.医療法人の理事長を兼務することは避けた方が良い。
　医療法上、理事長の兼務を禁止する規定は現在のところありません。
　また、厚労省で定めている「医療法人運営管理指導要綱」においても、医療法人と取引関係にある営利法人の社長と、医療法人の理事長を兼ねることは、適当でないとされていますが、２つの医療法人の理事長を兼務することについて、定めはありません。

　では医療法人の理事長の兼務はOKなんでしょうか？

　厚労省作成資料「特定医療法人FAQ」という資料があります。
　　　「医療法人は複数の医療機関の開設が可能であるのに、理事長がさらに他の医　　　
　　　療法人の理事長として医業を行わなければならない必要は通常ないものと考えら
　　　れます。そのため、特別の理由・必然性がなければ、医療法人の代表者である理
　　　事長が他の医療法人の理事長を兼ねることは認められないものと考えられま
　　　す。」

　つまり、「医療法人１個で分院がいくつも出せるのに、2個の医療法人の理事長になる必要ありますか？ないでしょう？」と言っているんです。

　法律上はっきり定められているわけではないのですが、特別な必要がないですよね？ということで、役所から「医療法人Aさんは他の理事長候補者を探してください」と指導される可能性が高いです。

　ただ特殊な場合はあると思います。たとえば父親がA医療法人の理事長であったが急に亡くなった、自分もB医療法人の理事長であり、A医療法人の理事長適任者が現在いない、というとき、A医療法人の診療を継続するためには、取り急ぎ自分が理事長になるしかない、というようなときです。このようなときには緊急措置として役所から認められる可能性はあると考えます。（ただその場合では緊急措置であるとして、「早く次の理事長候補者を探してください」と役所から言われる可能性が高いです）

]特定医療法人FAQという資料があります。医療法人についてのさまざまな疑問について厚生労働省の見解を示したものです。そのなかに【医療法人の理事長の兼務】という項がありますので引用します。

「医療法人は複数の医療機関の開設が可能であるのに、理事長がさらに他の医療法人の理事長として医業を行わなければならない必要は通常ないものと考えられます。そのため、特別の理由・必然性がなければ、医療法人の代表者である理事長が他の医療法人の理事長を兼ねることは認められないものと考えられます。」

簡単に言うと、複数の医療機関の開設ができる医療法人の理事長が他の医療法人の理事長を兼任することに必要性がないので特別の事情がなければ認められない、ということです。

iv.
以上をまとめますと、法律上では医療法人の理事長を兼務することは問題ありませんが、所轄官庁（都道府県および厚生労働省）の行政指導により認められない可能性がありますので、なるべく避けた方が好ましいと思われます。